各種法定、基準等の遵守
技術基準の遵守について
自家用電気工作物が事故を起こすと、感電や火災などの被害をもたらすとともに、電気を供給している電力会社の配電線を停電させ、その配電線から電気を受けている他の者に被害をもたらすことになります。
事故防止のため、設置者は、技術基準を遵守して、電気工作物を安全で良好な状態に維持することが義務づけられています。技術基準は、平成9年3月の改正の際に、保安上必要な性能のみを規定する『性能規定化』が行われました。
これに伴い、技術基準を満たす具体的な技術的内容は『電気設備の技術基準の解釈』として公表されることになり、技術基準適合性の判断の基準として用いられています。
設置者が技術基準の遵守義務を果たすためには、電気主任技術者や電気管理技術者、電気保安法人の保安業務担当者(以下、「電気主任技術者等」という。)がその適合状況の確認を行うことになりますが、設置者は電気主任技術者等が行う適合状況の確認が円滑に行えるように配慮する必要があります。
電気主任技術者等は、設置者に代わって、電気設備が技術基準に適合していることを確認し、不適合又は不適合のおそれがあると確認された場合には、設置者に対し、技術基準に適合するためにとるべき必要な措置や必要な措置をとらなかった場合に生じる結果(感電、火災、損傷、波及事故など)を報告する必要があります。
保安規程について
設置者には、電気事業法に基づき、保安規程の作成義務、届出義務、遵守義務が課せられています。
保安規程は、設置者が自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するために定めたルールであり、その内容は大きく二つに分けることができます。一つは電気主任技術者を中心とする保安管理体制に関するものです。
もう一つは、自家用電気工作物の巡視、点検、検査等の具体的な手順等に関するものとなります。
保安規程には、自家用電気工作物の種類や規模に応じて、最も適した保安管理体制を確立するため必要な事項を定める必要がありますが、定めるべき基本事項は次の通りとなります。
- 自家用電気工作物の工事、維持又は運用に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること。
- 自家用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者に対する保安教育に関すること。
- 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安のための巡視、点検及び検査に関すること。
- 自家用電気工作物の運転又は操作に関すること。
- 発電所の運転を相当期間停止する場合における保全の方法に関すること。
- 災害その他非常の場合に採るべき措置に関すること。
- 自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安についての記録に関すること。
- 自家用電気工作物(使用前自主検査、溶接事業者検査又は定期事業者(以下「法定事業者検査」と総称する。)を実施するものに限る。)の法定事業者検査に係る実施体制及び記録の保存に関すること。
- その他自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安に関し必要な事項。
設置者は、保安規程を定めた場合、あるいは変更した場合に産業保安監督部長に届け出る必要がありますが、電気工作物を安全、かつ、良好な状態に維持するためには、この保安規程に基づいた適正な制度運用がなされることが重要です。
電気主任技術者等は、日常行われている自家用電気工作物の運転、点検・検査、変更工事等の中で、自ら保安規程に定められた事項を遵守するとともに、自家用電気工作物の設置者及び従事者が保安規程に定められた事項を遵守していることを確認する必要があります。
- 参考
- 電気事業法施行規則 (保安規程)第五十条
電気工事士法及び電気工事業法について
昭和62年、電気工事士法及び電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)が改正され、一般用電気工作物に加え最大電力500kW未満の需要設備(自家用電気工作物)も規制対象とされました。
電気工事士法の改正によって、新たに自家用電気工作物の電気工事に従事する者の資格として、「第一種電気工事士」及び「認定電気工事従事者」並びに「特種電気工事資格者」を制定し、それまでの一般用電気工作物の工事を行う「電気工事士」が「第二種電気工事士」に改められました。
また、電気工事業者に対し事業の登録及び主任電気工事士の設置等の義務を課している「電気工事業法」の改正も同時に改正され、一般用電気工作物に係る電気工事の事業を行う者に加えて、新たに自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)に係る電気工事の事業を行う者(通知電気工事業)も規制の対象とされました。